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SPECIAL

07/08/2010 UPDATED

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アートファン、ソエダトナリによる連載コラム。
第一回目では、ストリートアートを扱うギャラリーの中で世界屈指の有名ギャラリーとして知られる、NYのDeitch Projects (ダイチ・プロジェクト)で行われたShepard Faireyのソロ・エキシビション「MAYDAY」のレポートコラムをお届けします!

Text:Tonari Soeda
ソエダトナリ / アートファン。


もしどこかに“アートギャラリーにまつわる歴史年表”というものがあったなら、これはそれに載るくらいの事実かもしれない。

NYマンハッタン、SOHO地区にあるギャラリーDeitch Projects (ダイチ・プロジェクト)。ストリートアートを扱うギャラリーの中では世界的に見ても一流ギャラリーの一つに数えられるこのギャラリーが、2010年5月に開催された最後のショーをもって閉鎖となった。
これは多くのストリートアートファンに驚きを与えた一つの事件となった。

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Photos by Jennifer Macchiarelli

Deitch Projectsとはオーナーのジェフリー・ダイチ氏が取り仕切り、これまでにSWOON、Steve Powers (ESPO)、OS GEMEOS、Dash Snow、David LaChapelle、Barry McGee、Ryan McGinnessなどと、数え上げたら切りがないほどの有名アーティストのショーを開催してきたギャラリーだ。

「Deitch Projectsは今後も残り続け、誰かが後を継いで運営を再開するらしい」という噂もある。しかし実際にどうなるのかはまだわからない。
そして有名オーナーであったジェフリー・ダイチ氏は今後、Los Angeles MOCA (The Museum of Contemporary Art)のディレクターに就任することが発表されている。
L.A MOCAでどのようなディレクションをするのか。Deitch Projectsで扱っていたようなアーティストを彼が美術館に引っ張っていくのだろうか。…となるとストリートアートにもこれまでとは違った展開が起こるかもしれない。そこには様々な憶測や期待が飛び交っている。
そして多くのファンが、Deitch ProjectsのラストショーとなったShepard Fairey (OBEY)のエキシビションに注目した。

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そう言えば02年か03年、私はRyan McGinnessのエキシビションをDeitch Projectsに見に行ったことがある。しかしその時は会期を間違え、終了した次の日にギャラリーのドアを開け、忙しそうに改装している業者のおじさんに「今日は何もやってない」と言われて残念な思いをしてトボトボと帰ったことがある。

そんなことを思い出しながら今回ばかりはきちんと会期を確認し、Shepard Faireyのエキシビション「MAY DAY」を見に行ったのだが、とにかく「良い」というのが一番の感想。
やっぱりShepard Faireyの作品は何も言わせずに「格好良い」と思わせ、そのクォリティとキャッチーさによって一瞬で観客のこころをつかんでしまう。

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しかしそればかりではない。Shepard Faireyの作品には勿論メッセージ性も強く、作品上では現代の政治上のテーマが色濃く表されている。むしろそれが彼の制作の、メインパーパスの一つと言える。
彼の作品に用いられている人物やスローガンを見てもそれは伺える。
ジョンとヨーコ、アウンサンスーチー、ダライラマ14世、リチャード・ニクソン、ジミ・ヘンドリクスなどの政治的・時代的背景の強いキャラクターやアメリカンアイコンが多く用いられる。

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また彼は08年アメリカ大統領選挙時のオバマの公式ポスターを制作したことでも知られているが、それらの多くにはポップ・アートの旗手、またアメリカンアーティストの象徴的な存在の一人、アンディ・ウォーホルの影を感じることもできる。また他にもロシアンアヴァンギャルドの影なんかも見え隠れする。

Shepard Faireyが今回制作したこの壁画では、政治問題、環境問題、健康管理、言論の自由、行動主義などのテーマが組み込まれているそうだ。
核爆弾やピースマーク、ドルマークと赤十字などといくつもの記号が星条旗に意味深に埋め込まれ、「私たちは惑星を裏切っているか?」と書かれた新聞が広げられ、拡声器からは大きく「MAYDAY」の文字が飛び出している。

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今回のエキシビションタイトルになっている「MAYDAY」という言葉。これは戦争映画なんかでよく耳にする「メーデー、メーデー」、つまり“救難信号”のこと。このエキシビションは彼から発せられた現代社会の影に潜む“救難信号”といったところかもしれない。
しかしギャラリーの外に掛けられた旗には二つの単語で「MAY DAY」と書かれていた。「MAYDAY」の単語が「MAY DAY」と二つに分かれていればその意味は5月1日に行われる「5月祭」ということ。このショーのオープニングは5月1日で、5月1日(MAY DAY)は労働者が権利要求と連帯を訴える日でもある。
そんなことも絡めたウィットを利かせたネーミングだったのか…?

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Photos by Jennifer Macchiarelli

彼の作品にはそんな政治的な背景が強く見えるが、ともあれ作品は“キャッチー”で、“ポップ”で、“クール”で、シンプルに楽しめる。わかりやすい顔と同系色で統一されたポートレイトのビジュアルインパクトは強く、パっと見てその絵に引き込まれる。そしてじっくり見ればレイヤー使いも美しく、何かを訴えている空気が漂ってくる。
ギャラリー内も巨大な作品から小さな作品まであり、数もかなりのボリュームで観客を楽しませる。

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大きなギャラリーに大きな作品、クォリティの高い作品が並んでいるのはこれぞDeitch Projectsといったところ。色と作風で作り上げられた統一感は素晴らしい。
このスケール感やエンターテイメント性、社会や政治的メッセージ性には何とも“アメリカ的”なものを感じた。

そしてジェフリー・ダイチ氏が、アメリカを代表するギャラリーの最後のショーを、今やアメリカを代表するストリートアーティストであるShepard Faireyに飾らせたということも何ともアメリカ的。

ストリートでステッカーやポスターをひたすら貼るという活動を学生時代から続けてきた、逮捕歴10数回の“アーティスト”の作品が、大統領選の公式ポスターに選ばれ、更にそれがスミソニアンNATIONAL PORTRAIT GALLERYに所蔵されるまでになってしまう。そしてストリートアートのスターとも呼べるような存在になったShepard Faireyは、Deitch Projectsのラストショーで社会の影と欺瞞を暴くべく声高に“メーデー”を訴える。

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一人の学生のストリートから始まった活動がこれほどまでに注目され、評価される。こんな一連のストーリーが現代ストリートアートのアメリカンドリームと言えるかもしれない。

ストリートアート界における“事件的な節目”でShepard Faireyが見せた「MAYDAY」。とにかくシンプルに楽しかった。「なんと言っても作品が格好良い!」。
そしてアメリカという地で、アメリカらしいアートを目にした気がした。
もしかしたら、今後Shepard FaireyがLos Angeles MOCAに登場することもあり得るのか。
いや、彼はいつでもストリートでファンを楽しませてくれるはず。渋谷や原宿でだって彼のステッカーやポスターを見ることが出来るのだから。

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もしどこかに“アメリカンドリームの体現者リスト”というものがあったなら、番外編くらいにはShepard Faireyの名が載るかもしれない…。


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